■3月2日開催、全国パック連主催セミナーの概要
「どうなる?容器包装リサイクル法見直し」 ― 識者、国、事業者団体を招きセミナーを開催 ― |
3月2日、全国パック連主催によるセミナー「どうなる?
容リ法―容器包装リサイクル法の成果と課題―」が、東京・文京区シビックホールで開催されました。90人収容の会場は定員を超えるほどで、同法の改正をめぐる動きが事業者や市民から高い注目を集めていることがうかがわれました。当日は環境省及び経済産業省からも講師を招き、現状での評価や課題、今後の見通しなどについて詳しく説明をしていただきました。以下、当日の主な内容をまとめました。 | |
◆容器包装リサイクルと紙容器 石川雅紀氏(神戸大学大学院経済学研究科教授)
1.リサイクルの経済と紙容器 リサイクルは概して手間がかかるものであり、経済が発展して所得が上がる(=人件費が上がる)ほど、一般的に一からものをつくるよりも経済的には不利になる。また、廃棄物処理の面でも、技術が上がればリサイクルより焼却炉やガス化溶融炉で処理した方が有利になる。つまり、市場メカニズムによる自立的なリサイクルは、現代の日本では衰退せざるを得ない。 一方、所得が増加すれば環境について配慮する余裕ができ、非市場リサイクルが成立するようになる。紙パックのリサイクルも、もったいないということを子どもたちに伝えようという教育・啓発目的で始まったと聞いている。
2.容器包装リサイクル法と紙容器の特徴 容器包装リサイクル法(以下「容リ法」)の制定後、他のさまざまなリサイクル関連法が成立したが、それらはリサイクルに係るすべての費用を価格に内部化させている。ところが容リ法は、収集・選別・保管を自治体負担(一般税からの支出)としているのが大きな特徴であり、汚染者負担の原則からすると問題がある。この点をどうするのかが、今回の法見直しの重要な論点になる。また、リサイクルという手段そのものの有効性も問われる。 紙容器については、有価で取り引きされるため事業者の再商品化義務は免除されている。しかし、自治体がこれらの品目を収集すれば、収集・選別・保管の費用は発生する。売却したお金でその分が賄えればいいが、賄えなければその費用をどうするのかが問題になる。 容リ法の目的は、①埋立を回避すること、②環境負荷を削減すること、③資源を有効利用することにある。しかし紙容器は、回収されなければほとんど焼却されているので、①の点は当たらない。②については、紙容器はもともとバイオマス起源の容器だから、CO2削減という面での効果は疑問である。したがって、紙容器リサイクルの目的は③にあり、現状でも再生紙原料として有効に活用されている。
3.紙容器リサイクル率向上への課題と提案 唯一問題があるとすれば、リサイクル率が低いという点であり、その大きな原因は消費者が排出するときの手間にあると考えられる。また自治体にとっては、紙容器をリサイクルしても目に見えてのごみ減量効果は期待できず、1品目増えることによる負担の方が大きい。 現在、紙容器のリサイクルを担っている大きな力は、流通による店頭回収と市民による回収である。法律を見直すのであれば、そこの部分でもっと回収率が上がるようなインセンティブを働かせる方向制が求められる。 回収率向上へ向けた提案として、ドロップオフというシステムが考えられる。コンビニのような店舗を拠点(ドロップオフステーション)として、消費者がいつでも都合のいいときに持ち込めるようにする。集まりさえすれば、その後は市場メカニズムが働く。問題はドロップオフステーションの管理コストであり、ここをEPRの原則に沿って行えば、問題は解決するのではないか。
◆容リ法の施行状況と今後の課題 藤井康弘氏(環境省企画課リサイクル推進室長)
1.容器包装リサイクル法の概要 基本的枠組み法として、循環型社会形成推進基本法が2001年1月に施行され、その下に廃棄物処理法と資源有効利用促進法、さらに個別物品の特性に応じた5つのリサイクル法がある。容リ法はその中で、いちばん早く制定されたもので、家庭から排出されるごみの重量の2~3割、容積比で6割を占める容器包装廃棄物のリサイクルを促進することで、廃棄物の減量と資源の有効利用を図るのが目的。ごみ処理の責任を全面的に市町村が負う従来の考え方を改め、事業者及び消費者にも一定の役割を担っていただくこととした。 事業者は、容器包装の使用量に応じて一定の方法で再商品化する義務を負う。現実的には、指定法人に委託費を支払うことで義務を履行している。再商品化義務の対象は、ガラスびん、ペットボトル、その他プラ、その他紙。
2.容器包装リサイクル法の施行状況 ごみの総排出量は横ばいまたは微増傾向にあり、容器包装廃棄物は容積比で約6割、中でもプラスチックと紙が大きな割合を占める。法施行後、ほとんどの品目で分別収集量及び再商品化実績量は増加している。しかし、その他紙とその他プラについては、対象になってから4年しか経っていないこともあり、実施市町村の割合がまだ低い。 容器包装廃棄物の再商品化方法としては、マテリアル・リサイクルを基本とし、ペットボトルについてはペットボトルへのリサイクルも可能になった。しかしその他プラについては、ケミカル・リサイクルが8割以上を占めている。 法施行の効果として、特定事業者が容器の軽量化や複合素材から単一素材への変更など、リサイクルに配慮した設計、素材選択に取り組むようになった事例もある。
3.容器包装リサイクル法見直しの状況 2005年12月を目途とする容リ法の見直しに向け、審議会において関係者ヒアリングなどが行われている。その中で出た容リ法の評価としては、次のようなものがある。 ①容器包装廃棄物の減量化、最終処分場の延命には貢献しているが、大量生産・大量消費・大量リサイクルを助長し、ごみ全体の排出量削減にはつながっていない。 ②分別排出について消費者の意識が高まったが、自治体にとっては、収集等の費用負担が増大している。 ③新たなリサイクル技術の進展を促す一方、再商品化の手法や入札制度等には課題が多い。 容リ法見直しに当たっては、次のような論点が出ている。 ①排出抑制及び再使用…リターナブル容器の利用促進やその他の排出抑制策など ②分別収集…市町村及び事業者の責任範囲、分別基準適合物の品質向上、店頭回収や集団回収の位置づけ ③再商品化…再商品化手法、再商品化製品の販路拡大、再商品化義務量のあり方など ④その他…容器包装の範囲、事業系容器包装廃棄物の取り扱い、小規模事業者の適用除外、ただ乗り事業者対策、普及啓発・環境教育など◆ 容器包装リサイクル制度を巡る状況と主な論点 井内摂男氏(経済産業省リサイクル推進課長)
1.容器包装リサイクル法運用の現状 再商品化量については、ガラスびんは横ばい傾向、ペットボトルは順調に伸びており、その他プラは急激に増加して40万トンに迫ろうとしている。その他紙も増えつつあるが、まだ7万トン弱にとどまる。ガラスびんは市町村による独自処理が半分以上を占めるが、その他プラはほとんどが指定法人ルート。
2.容器包装リサイクル法の効果と課題 「リデュース」の面では、事業者による排出抑制が進み、重量ベースで見ると、飲料容器全体の使用量は1994年の約4500トンから2002年の約3500トンへと大きく減少した。これは、容器の主力がびんなどからペットボトルへ軽量化しつつあることも表している。 1人当たりの一般廃棄物発生量を国際比較すると、日本は410kg/年で、リサイクル先進国とされるドイツの540
kg/年よりかなり少ない。GDPとの相関関係で見ても、日本は一般廃棄物の発生量が少ない方と言える。一般廃棄物発生量はアメリカが日本の4倍以上で断然多く、EU全体でも発生抑制は進んでいない。 一般廃棄物最終処分場の残余年数は、平成5年度に8.1年まで減少した後、容器包装リサイクル法の効果もあって平成14年度は13.1年まで回復した。ただ、残余容量が減り続けている事実には変わりがない。 リサイクルの面では、再商品化事業者間の競争でペットボトルやその他プラの落札価格が徐々に下落し、リサイクルコストの低減につながっている。 ガラスびんにおけるリターナブル容器の比率は低下傾向にあり、学校給食用牛乳のびん使用率も、1970年の約90%から2003年の30%強へと大きく減少している。その一方で、宅配牛乳は盛り返す兆しが見られる。 デポジット制度については、従来の回収システムを活用できれば有効だが、全く新しい物流をつくることは社会的コストのロスにつながりかねない。
◆スチール缶リサイクルと容リ法 酒巻弘三氏(スチール缶リサイクル協会専務理事)
1.容器包装リサイクル法とスチール缶 容リ法が目指したのは、資源物として収集した物の出口問題を解決することであり、そのために事業者の再商品化義務が設けられた。ただスチール缶については、有償で取り引きされていることから再商品化義務が免除された。 法施行後、我々事業者も、また自治体や市民も、それぞれの役割を果たしつつ法の目指すところを達成してきたと評価している。
2.スチール缶リサイクル協会の取り組み 協会は1973年に設立され、容リ法制定以前からスチール缶リサイクルの入り口と出口の整備に取り組んできた。具体的な活動としては、観光地の美化キャンペーン活動、「スチール缶リサイクリングマニュアル」の配布、自治体の資源化施設整備への支援などがある。 収集されたスチール缶は、全国75の製鉄工場(電炉・高炉・鋳物工場)で受け入れ、リサイクルしている。回収率は、平成3年当時は約50%だったが、右肩上がりで向上し、平成15年には87.5%となっている。
3.容リ法見直しに対する協会の考え方 ①自治体の収集分別コストが重いとの声があるが、コストの実態を正確に把握し公開する必要がある。 ②収集分別コストの適正性を評価し、必要であればコストを抑える工夫をすべきである。 ③責任・権限・費用の分担については、コスト削減のインセンティブが働き、コストミニマムかつ環境負荷低減につながる方法にするべきである。
◆会場との質疑応答・意見交換 各講師の報告を受けて、会場の市民や企業関係者からも盛んに質問や意見が出されました。紙パックに関して、「公立学校では学乳パックのリサイクルを徹底してほしい」との要望については、環境省の藤井氏より、「学乳についてはリターナブルびんを促進してほしいという要望もあり、容器としてどちらがいいかは一概に言えない。ただ、紙パックの学校ではできる限り環境教育に役立ててほしい」との回答がありました。また、丸富製紙の佐野社長からは、再生紙メーカーの立場から「我々としては牛乳パックの再商品化のためにこれまで努力してきたが、パルプもののトイレットペーパーが3分の1を占めている。再生紙製品の普及につながる仕組みがほしい」との意見がありました。
市民からは、次のような意見もありました。 ・私自身はペットボトル飲料は買わないのに、ペットボトルの分別収集や中間処理に自治体が多額の税金を使っているのはおかしい。買った人がそのリサイクル費用を負担すべき。 ・3Rのうちリデュースを最優先させるべきであり、そのためにも拡大生産者責任を徹底してリサイクル費用を商品価格に内部化するのがいちばんいい。 最後のまとめでは、環境省・経産省の両氏とスチール缶リサイクル協会の酒巻氏が、「循環型社会推進のためには、責任を押しつけ合うのでなく、市町村・事業者・市民が協力し話し合いながら、それぞれの立場でもっとできることを考えていく必要がある」と声を揃えました。
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