牛乳パックは森の副産物
牛乳パックの原紙は北欧、北米から輸入され、その原料である針葉樹林はしっかりと管理されていると、これまで消費者の立場である私たちは「百聞」していました。しかし、その現状は「一見」もしたことはなく、実際どのように行われているか、長年知らないままでした。
昨年からの回収拠点拡大事業の協働団体である全国牛乳容器環境協議会が、北米の森林管理状況を視察するとのことで、同行させていただき、昨年10月19日から26日の1週間の日程で視察に行ってきました。
この一見の価値は私たちにとって非常に大きく、牛乳パック原紙は、大事に育てた森林資源を、無駄なく有効に使うために生まれた副産物であることを実感してきました。1週間の主な日程は右の通りでした。
ウェアーハウザー社の概要
視察を受け入れて下さったのはウェアーハウザー社。豊富な山林を経営ベースに、製材、建設部材、家具材、紙の生産を行っている世界有数の木材会社である、ということは恥ずかしながら訪問して初めて知った次第です。
同社は1900年 フレデリック・ウェアーハウザー氏が創立。90万エーカー (36万ヘクタール)の森林地を購入後、この豊かな森林資源を活用するために製材、パルプ製造事業を始めたとのこと。「この森林は我々や我々の子どものものではない。我々の孫のためのものだ」という創始者の言葉は社訓となっていて、生育に約50年を要する森林をビジネスの対象としているからこそ、長期的な視野をもつことが必要と語っているように思いました。
そのため、森林管理については徹底した研究を行い、環境保全の観点から研究や実際に活動を行っているということです。本社訪問の際、山林担当の方から山林経営者としての「使命」を以下のように説明されました。
・いかに健康的で生産性の高い山林を維持するか。
・環境への配慮
・再植林(伐採エリアは1年以内に植林を完了させる)
・成長性の早い山林の研究開発
・森全体の美観への配慮
・山林認証の取得(ISO14001, SFI, CSA)
・将来の供給量を阻害させることなく、安定的に持久性を保ちながら供給していく
社員は世界に58000人、所有林の面積は、アメリカだけでも220万ヘクタール以上、伐採権を持つエリアも含め世界に1700万ヘクタール(日本の国土面積の約半分近く)の山林をもち管理を行っている、という説明を受けても、大変なスケールで、とても想像がつかない・・・ので、ウェアーハウザー社のすごいと思う具体例をあげます。
シアトルから南に250kmのところに位置するセント・ヘレンズ山が、1980年に大噴火しました。その際、ウェアーハウザー社も所有の森林68,000エーカー(27,500ヘクタール)が全滅するという被害を受けましたが、噴火後すぐに火山灰に覆われた倒木の救出作業を1000人規模で行い、結果、85000軒分の家に匹敵するだけの木材を救いました。さらに、地質調査を踏まえて跡地に1,840万にものぼる苗木を1本1本手植えして、噴火から7年後に苗木の植林を完了させました。現在は噴火の痕は全くみられないほど、豊かな山林が広がっていて、それと対照的に公有林地域は調査研究のためそのままにおかれ、未だ荒涼とした光景となっています。これはウェアーハウザーとしてもかつてない大規模でチャレンジ的森林再生事業だったとのことですが、かかわった多くの人々の献身的な努力があったからこそで、非常に感銘をうけました。(日本であれば真っ先に「プロジェクトX」に取り上げられたことでしょう。)
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19日
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シアトル到着 |
20日
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午前;ウェアーハウザー本社訪問。事業内容、森林管理状況、リサイクル等についてのレクチャーを受ける。
午後;ウェアーハウザー中央テクノロジー研究所訪問 |
21日
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午前;ウェアーハウザー社Mima育苗場、Rochester採種場を見学
午後;セントへレンズ山森林学習センター見学 |
22日
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終日;ウェアーハウザーロングビュー工場、白板製造工程、同施設内、チップヤード、浄水・排水処理施設等を見学、ラミネーション工程(パシフィックラミネーション社)NOPAC再生紙製造工場見学 |
23日
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午前;テトラパックバンクーバー工場見学
午後;アルペンローズ乳業会社見学 |
24日
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午前;ウェアーハウザー社最終処分場見学
午後;グリーンマウンテン製材工場見学 |
25日
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シアトル出発 |
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周囲の景観に配慮して建てられたウェアーハウザー社本社ビル
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噴火で上部400mが吹っ飛んでしまったセントヘレンズ山。手前の山々の植林は全てウェアーハウザー社による |
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