packren-news  北米ペーパーボードメーカー「ウェアーハウザー社」社有林視察報告3

ロングビュー工場は産業団地

さて、ウェアーハウザー社は日本で使用されている紙パック原紙の製造元の1社ですが、その原紙はワシントン州ロングビュー市の工場で製造されています。ロングビュー工場もまた広大な敷地に建てられており、上質紙・白板紙、新聞紙などを製造するラインの他、ラミネート加工場、製材工場も設置されていて、産業団地そのものでした。

原紙の製造工程は、まずチップヤードに各地からダグラスファー(米松)、パイン(松)、へムロック(栂)といった針葉樹のチップが運ばれてきます。チップが良質かどうか検査を経て、蒸解し、黒液(リグニン)を分離除去し繊維を取り出します。褐色パルプを漂白し、さらに繊維の絡みをよくするためパルプをすりつぶした後、3層に抄紙し、乾燥させロール状に巻き取ります。 さらにラミネート加工を行い、ロールにした状態で日本に送られてきます。 製紙は豊富な水資源が必要ですが、ここでは側を流れているコロンビア川から取水し、抄紙工程で使用した水は排水処理場でバクテリア処理し、沈殿させ、上水を取ってph検査、温度管理した上で、排水しています。 ダイオキシン検査やその他の検査についても1~3ヶ月おきに実施し州当局にデータ報告していて、ダイオキシン値は検知不可能のレベルまで下がっているとのことでした。

ロングビュー工場の敷地内には、日本製紙との共同出資により古紙を扱う新聞用紙製造工場も併設されていて、ここで使用されている古紙はウェアーハウザーがアメリカ国内を独自の回収車で収集してきた物を使用しているとのことで、ウェアーハウザーはオフィス用紙、新聞用紙、段ボール等の古紙回収の大手業者でもあったのです。

何を見ても聞いても、その取り組みの規模の大きさに、へえ~へえ~(平均70へぇ!)と口あんぐり状態でしたが、これだけは胸を張って威張れる!ということがありました。それはリサイクルです。牛乳パックをはじめ、日本の分別収集はアメリカに比べ、本当にキッチリ細やかに行われています。そのことにより、質の高い資源として再利用されるわけですが、アメリカはほとんどミックス状態。見学した際も古紙の中には信じられない物がたくさん混じっていて、異物排出口からゴロゴロ出てきていました。一番目立ったのは牛乳のポリ容器。 アメリカのみなさん!牛乳パックは古紙原料ですが、牛乳ポリ容器は原料ではありませんよ、あしからず。。。

 

ゆりかごから墓場まで、最終処分場

ウェアーハウザー社自身で所有する最終処分場は、ロングビュー工場から約30km離れた所にあります。1984年に工場の設備入れ替えを機に計画されましたが、住民との協議や、また工事用地に野生生物の宝庫となる湿原地帯がかかっていたため、その湿原地帯を別の場所に復元し、それから工事に取りかかったため、工事は1993年に開始されました。

最終処分場にはボイラー灰、脱墨スラッジ、石灰焼却灰、その他先ほどの古紙再生ラインから排出された異物などが貨車で運ばれてきます。こんな山奥まで線路が敷かれているというのも驚きですが、西部開拓時代の名残の線路だそうです。

処分場は何層にもシートや粘土、れきが敷かれ、廃棄物の上にも幾層も載せられ埋め立てられています。全20区画のうち、第1区画はすでに最終処理である表土を載せ草の種の入った水をまいて草を茂らせています。この1区画で約10年かかっていて、特に最近は廃棄物削減に努めていることから、20区画を使い切るのに200年もしくはそれ以上かかるのではとのこと! さらにこの処分場では雨水を浸透させないために、廃棄物を埋め立てた土の上にシートをかぶせ、その上に降った雨水は回収し、沈殿池でガマの穂などを植えた草地で砂、砂利などをろ過させて、自然の川に戻しています。

一方、廃棄物に触れて浸透してきた雨水は、その地下に埋めた排水処理装置によって回収され、ポンプで吸い上げ貯水池に貯められ、ここで自然に蒸発させて濃縮し、タンクローリーに入れ、 再びロングビュー工場に運ばれ、排水処理施設で最終処理するという徹底ぶりでした。

日本でも最終処分場というと、なかなか見学する機会はなく、さらに不法投棄や不適切な処理方法で問題も多い状況ですが、説明の中にあった「成功の秘訣は情報開示」という言葉の通り、適切に廃棄物を処理すること、そしてそのことを関係者や住民に理解してもらうための企業姿勢は、日本においても、今後さらに求められてくると思います。




廃棄物に触れて浸透した雨水の貯水池。奥の黒い水はタンクローリーに入れられロングビュー工場の水処理施設で最終処理を行う。手前は予備貯水池で単に雨水がたまったもの。(写真提供:ウェアーハウザー社)

 

 

 

ロングビューのパルプ工場

 

チップヤード。地面に触れたり異物が混入しないように毎週清掃している

 

異物排出口

 

廃棄物最終処分場。手前が第1区画、真中は第2区画廃棄作業中、奥が第3区画。人工の地層を使ってカバーしている。 (写真提供:ウェアーハウザー社)


雨水が浸透しないようシートをかぶせる作業の様子

 

最終処分場雨水濾過場(写真提供/ウェアーハウザー社)

 


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